“赤”のキャスター

“赤”側のサーヴァント、黒幕衆の一人。黒幕衆の中ではもっとも格下。何しろ「う一ん、このマスターなんか堅苦しくて面白くなさそうだなー、え?全世界救済?何それ面白そう。やるやるー!」という裏切り方は若者の衝動的突発的な行動そのものである。
正体は名高きウルトラ文豪、ウィリアム・シェイクスピア。詳細に関しては今更語るまでもない、世界でもっとも知られている作家の一人である。いわゆる作家系サーヴァントは一癖も二癖もある連中ばかりだが、当然彼もその類の人間だ。戦闘能力はないが、マスターをパワーアップさせることにかけては天下一品。マスターが変わり者であればあるほど、その文章も冴え渡るとか。つまり、マスターを強くさせることでマスター自身がアサシンとして攻めていくのが、聖杯戦争における彼のスタイルである。当然ながらマスターをいくら強くしたところで、サーヴァントに勝てる確率は極めて低いのだが———その低い確率を、一度だけ亜種聖杯戦争で引き当てたことがあるとか。
自分が書く物語をこよなく愛し、登場人物にも惜しみない愛情を注ぐ。その一方、凡庸を疎ましく思う。ちなみに彼の考えるところの「凡庸」とは能力容姿に依るものではない。決断しない人間、選択しない人間、保留する人間、日々生きていくという奇跡に感動を抱かなくなった人間をこそ、凡庸と呼ぶのである。
繰り返しになるが戦闘能力は皆無である。しかし、その知名度はほぼ世界全域に広がっており、彼の操る「劇団」による幻影は直接的な被害は皆無とはいえ、混乱させるにはもってこいの魔術だ。まあ、たまに味方側も混乱に陥れるのだが。
彼の最期のセリフは、普段あらゆることを美麗な文章というオブラートに包んで誤魔化す彼の、数少ない本音の一つである。シェイクスピアは劇作家の活動と並行して俳優としても活躍していた。聖杯大戦という大舞台で、中心人物として活躍したいという願いが点ったとしても、仕方のないことだろう。
ちなみにプロトタイプ版「Fate/Apocrypha」とでは、宝具の名前は同一だが役割は大きく異なっている。当初、シェイクスピアを味方側にするプロットがあった際には「主人公が死ぬ寸前にサーヴァントであるシェイクスピアが宝具を発動させ、どうにか生存の道を探る」というシチュエーションもあるにはあったのだが、サクサクと没に相成った。

Fate/Apocrypha material: Fate/Apocrypha用語辞典