タタリ発生の条件となる、閉じたコミュニティーで流布される共有常識。
匿名性の告発、蓋然性のない証言、浸透率の優れた流行、といったものを利用して成長していく。状況によって様々な形に変化するが、その中心たる核には“何もない”。タタリが正体不在と呼ばれるのはこの為だ。
ワラキアの夜が扱う『バッドニュース』、吸血鬼シオンが扱う『テラーニュース』はこれを魔力によって具現化したもの。更に高度な悪性情報の利用法に、悪質なコピーを捏造して操るというものがある。
用語
§
事柄
現実に呪いがあるように、量子虚構世界であるSE.RA.PHにも呪いは存在する。
それが悪性情報───知性活動から生まれた負の情報活動だ。
悪質なアジテート、純粋に利益を求める為に重ねられた嘘、核になる対象が空洞のまま広がっていくデマゴギー、と、情報的にただマイナスなだけである筈のものがプラスである真相を汚染し、コミュニティ全体をマイナスのものにしてしまう癌(キャンサー)である。
物質世界であれば一過性のものとして流されるが、情報が基になるSE.RA.PHにおいてこれらの悪性情報は領域を浸食する穢れとして扱われる。
月の裏側には人類か言葉による文明を築き上げた時から記録され続けた悪性情報が投棄されている。はじめはただの「使われないデータ」にすぎなかったが、何千万、何億万1という悪性情報を溜め込むにいたり、ついには現実を犯す泥となってしまった。
月の表側には人間社会の正しい歴史が記録され、裏側には棄てられた忌まわしい犯罪の歴史が記録された。
これら等価値か、あるいは、表以上の悪性情報は表以上の霊子熱量を持つ。
かつてこの莫大なエネルギーを飲み干してムーンセルを支配するに至ったAIがいたが、最終段階でその目的を諦め、月の裏側に沈んでいったという。
翻訳者注
- ^ 何億万 → 何億