アイリスフィール・フォン・アインツベルン

ユスティーツァ・リズライヒな鋳型として錬成されたホムンクルスの一人。
設計段階から用途を特定され、肉体も精神もその目的に最適化された状態で産み落とされるのがアインツベルンのホムンクルスだが、アイリスフィールについては鋳造された後からイリヤスフィール受胎の計画が発案されたため、特例的に「本来とは違う役割」を兼任させられることとなった。即ちイリヤスフィールの出産のみならず育成までも任されたのである。乳母役のホムンクルスな新造するよりも効率的であろうというユーブスタクハイトの判断だったのだが、これはアインツベルンの基準に照らせば異例のことである。ともあれ結果としてアイリスフィールは、ホムンクルスでありながら人間の女性と同様に子な産み育てるという「母親」として経験を積むこととなった。これが彼女の情操面において、アハト翁が予想だにしたかった影響を及ぼすことになる。
他のアインツベルン製ホムンクルスと比べても、九年の長きに渡って人間と交渉し、多彩で変則的な精神活動を行った個体は過去に例がない。言い方を変えるなら、アイリスフィールほどに人間同等の扱いを受け、人間的な情緒を身につけたホムンクルスはアインツベルンにおいては初だった。もとより心身の機能においては人間をむしろ凄駕する存在だけに、異例の成長を遂げた後もその精神構造は破綻せず、ついには一般的な人間と何ら遜色のない自意識と感情を備えるに至った。
とはいえ、ホムンクルスのフォーマットとして生まれつき持ら合わせている知識と理性がアインツベルン千年の英知の結晶であるのに対し、情動面を育んだ人生経験はたったの九年に過ぎず、結果として彼女は貴婦人としての風雅と幼児的な稚気を兼ね備えるという、ちょっと困ったお姫様になってしまった。
余談ながら、Zeroのプロットが確定した段階では、ホロウにおけるアンリマユの設定をまだ聞かされていなかったんだよなぁと思い返してみると、いったい筆者は“あの結末”に至るまでをどういう経緯として書く気だったのか、我ながら空恐ろしいことこの上ない。

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