アーチャー(緑)

二回戦で戦う事になるサーヴァント。
マスターはダン・ブラックモア。
緑衣に身を隠した狙撃手。赤い外套のアーチャーとの混同を避けるため、緑茶[りょくちゃ]、と呼ばれる事も。
真名は森の狩人・ロビンフッド。
ただしロビンフッドといっても伝説にある本物ではなく、ロビンフッドのモデルになった義賊の一人。
もともとは村の厄介者……村はずれに住む天涯孤独の青年だったが、ひょんな事から村の徴税にやってきた領主の軍隊とかかわってしまった。
領主が代替わりした事により税は増加し、村に税を納めろという事は飢え死にしろ、という事に等しかった。
村人たちには領主に逆らう力も意思もない。
ロビンは村の人間ではなく、あくまで“森を犯す人間に罰を与える”という名目で領主の軍隊を撃退してしまう。その後、正体を隠して戦うことで村人たちからは『緑の人』として扱われる事になった。
罠や奇襲、だまし討ちが基本戦術のサーヴァントで、正面からの戦いは好まない。
獲物を森に誘い込んだ時こそ、このサーヴァントの本領となる。
「善良な森はオレの庭とは呼べない。
準備は万全、仕掛けは万能ってね。
より強大な獲物を射殺[いころ]す弱者の庭。
それがオレにとっての、シャーウッドの森ってワケ」
その切り札は森の植物から採れる毒。
実は毒使いとしてキャス狐と通じ合うところもあったりする。

ロビンフッドは『ロビン・フッド物語』に登場する、シャーウッドの森に潜む義賊で、時の暴君ジョン失地王に抵抗した正義の人として描かれている。
ギリシャ神話のオリオンとケルト神話の妖精たち、そしてドルイド信仰とが融合して誕生した義賊。
モデルとなる人物は存在するが、それが複数混合した結果と思われる。16世紀以降は、リチャード獅子心王時代の人物と考えられている。
正体は不明だが、確かにいた『誰か』。
自分のためではなく人々のために戦った英雄。
そして死後、人々から忘れ去られる運命の人。
(そういった視点で見ると、赤と緑、二人のアーチャーは似通ったパーソナリティを持っている)

初心[うぶ]な村娘を一目で落とすほどのハンサム。
……なのだが、善良でやや小心者な性格のため、完壁なイケメンという訳ではない。
正義にこだわる青臭い自分を隠すため、不真面目な素振りをしている。死より生を尊重する信条。

「誇りも怠惰もいいけどさ、死んだら何にもならないでしょ?」

といった、生き抜いた末に温かいものが残ればいい、という小市民的な願望の象徴。……もっとも、彼自身はそれを手に入れる事はなかったのだが。
基本、世をすねた視点、物言いをする。なんであれ「そんなもんですか」と流す事なかれ主義。
嫌われ者だった彼の処世術は『他人の深いところには立ち入らない』というものだった。
そのクセ人間好きなので、楽しそうな団らんがあればそのはじっこにひょっこり仲間入りし、最終的には友人ではないが他人でもない、というポジションに収まっている。
属性が善なので、悪人は憎むが善人(凡人)を憎む事はない。世を拗ねているが、決して他人の努力、徒労を嘲笑う事だけはしない。
彼の根底には自身の卑しさを恥じ入る後ろめたさと、コンプレックスがあるからだ。

アーチャーのサーヴァントとして召喚されたものの、マスターとの相性は悪い。
生前から奇襲、暗殺、破壊工作といった“卑劣な戦法”でのみ生き延びてきたアーチャーにとって、ダンの騎士道精神は足かせのようなものだからだ。
それが聖杯戦争、引いては彼の深層にくすぶっている“願い”にどう影響するかは、ゲーム本編を参照のこと。
また、相性は悪いものの、ダンとの関係はそれなりに良好。
騎士道精神とは相容れないものの、ダンは正義の人だ。なので、ロビンも嫌々ながらも指示に従っている。
嫌々なのは毛嫌いしているのではなく、人間的に正反対の人物だから。
ダンには誤魔化しがきかないので「また面倒な人にあたっちまったよ」と頭を掻く緑茶であった。

「状況にケチをつけたところで敵さんが転んでくれるワケでもなし。いいですよ、逆境にはなれてるし。大人しく、グチ一つなく付き合いますよ」
「私見ではあるが。一般的に、それを愚痴というのではないか、アーチャー?」
「へ?あ、そうっスね。こりゃ一本とられたわ」

ベテラン老兵と若くして達観した青年兵。
それがこのコンビの共闘スタイルである。

Fate/EXTRA Material: Fate/EXTRA用語辞典