“赤”のセイバー

“赤”のサーヴァントであるが、事実上は“黒”側に与していたサーヴァント。“赤”がシロウ・コトミネをマスターとして統一されたのに対して、こちらだけは獅子劫界離をマスターとして通常の聖杯戦争のようなパートナーを組んでいた。
正体は円卓の騎士が一人、真名モードレッド。アーサー王伝説を終わらせた叛逆の騎士である。そして彼女もまた、アーサー王のように人ならざる存在として生まれた。何しろ彼女の父親はアーサー王、母親にあたるのがアーサー王の宿敵、魔女モルガンであるのだ。
人工生命体、即ちホムンクルスがモードレッドの正体である。従ってその寿命も極めて短く、ただただアーサー王を討ち果たすために生まれたような存在だった。
彼女はアーサー王を憎むどころかひたすらに憧れを抱くようになるが、思い余って自分が嫡子であることを告白した彼女を、アーサー王が王として認めることはないと宣告するに至って、憧憬が転じて憎悪へと変わり果てた。
そして、血塗られた運命に導かれるように、モードレッドはカムランの丘にてアーサー王と対峙。敗れ去るも致命傷を負わせることで、アーサー王伝説に終止符を打った。
サーヴァントとしては一級品。父である騎士王(アーサー)と比較するとさすがに各種スペックは落ちるものの剣兵(セイバー)のクラスに相応しい実力を有している。『魔力放出』によるジェット噴射+『燦然と輝く王剣(クラレント)』による一撃は大抵のサーヴァントを一刀の下に斬り伏せる。また、地味に鎧の防御力も相当なもので、“黒”のバーサーカーの令呪で底上げした全力の一撃を喰らいながら、致命傷に至ることもなかった。
キャラクターとしてではなく、物語のポジションとしてはいわゆる「俺たちに明日はない」のボニー&クライド。当初のプロットから「大暴れしてやるだけやったら退場」だけは決まっていた。
本編の物語のバックグラウンドで、モードレッドの物語も進んでいく。夢という形で過去を反芻し、次に様々なサーヴァントとの出会いで―――特に、自分と同じホムンクルスとそのサーヴァントとの会話がターニングポイントだった。
その結末に至り、モードレッドは父が何を求めて剣を抜いたかをようやく理解する。
結局、それが分からなかったからこそ、モードレッドは苦悩し続けたからだ。そこに、他の騎士たちが王に感じた恐れはない。何しろ彼女自身、人ならざる存在なのだから。
とはいえ、じゃあ仮にどこかの聖杯戦争で偶然にも父に巡り会ったとする。即座に殴り合い斬り合いが勃発する。父を理解できたと思ったことと、その上で父を超えようという意気込みは別なのだ。
女性扱いされることを嫌うが、男扱いされても不機嫌になっていくという非常にややこしい、というか面倒臭い性格のサーヴァントである。私服は自分が選んだもので、それが他人に女性的に見えるかどうかは問題ないらしい。
また、魔力は充分に供給されているがそれはそれとして現世を楽しむために積極的に食事を摂取していくタイプ。好みはややジャンクな系統に偏っており、炭酸飲料大好きっ子。
円卓の破片という曖昧な触媒で召喚されたせいか、マスターである獅子劫とは奇跡的と言っていいほどに相性が良い。物語中では語られなかったが、獅子劫の服装からしてそもそも反骨心溢れる彼女にはお気に入りだったのだ。

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