霊子記録固定帯。
一定の間隔で事象の平均値を固定化するタイミングの事。
この宇宙は無数の可能性を許容し、多くの並行世界、違う展開の歴史を生み出している。
しかしそれを際限なく行うと宇宙の寿命が尽きてしまう為、一定のタイミングで“もっとも強く、安定性を持ったルート” から外れた特例の世界(ルート)を伐採し、エネルギーの無駄な消費を防いできた。
本来なら不安定な我々の認識宇宙を現在 過去 未来にわたり安定させているのはこの『伐採』と『記録带』によるものとムーンセルは結論づけている。
放っておけば無限に枝分かれしていく時間という大樹から不要な枝を伐採し、つねに「幹」だけにしていく行為───というのが一番分かりやすいイメージ。
固定帯となった歴史は過去 未来からの干渉をうけても不動のものとなるため、固定帯にある事象は何があっても変動しない。
仮に、「固定帯」より過去に移動して歴史を変動させようと、その「固定帯」に到達すれば歴史は強引に復元される。
霊子記録固定帯がある宇宙において、固定帯として登録された「結果」は決して変わらない。時間移動者に変革できるのはその「過程」だけとなる。
たとえば「ブリテンが滅んだ」という『結果』が固定された場合。
時間移動をして「ブリテンを繁栄させ、戦争を終結させ、誰もが幸福になった」という過程を成功させたとしても、歴史が固定帯に入った瞬間に「しかし、それでもブリテンは滅びた」という結果になる。
一人や二人、何人かの人生は救えるかしもれない。
しかし人類史という大きなうねりを変えることは決してできない。
これが霊子記録固定帯、魔術世界では『人理定礎』と呼ばれるもの。
逆に言えば、何らかの大偉業によってこの『霊子記録固定帯』を破壊できれば人類史を根底から否定する事が可能となるが、その方法でも「破壊した固定帯から先の人類史だけ」を否定するのが限界である。
次に訪れる『霊子記録固定帯』の決定ができるのは、その時代を生きた者たちだけである。
過去 未来からの介入では『霊子記録固定帯』に手を出せない。本作におけるアルキメデスの目的は次の霊子記録固定帯が訪れる前に『ムーンセルは壊れた』という結果を作り、その前提から始まる基本世界にすることだった。
それは本来なら起こりえない展開だが、それを起こすためにアルキメデスはシフトを繰り返した。
アルキメデスの主観において、次の霊子記録固定帯がかかる前にムーンセルを完全停止させてしまえば彼の勝利だった。
しかしアルキメデスが勝利する結未はいくつかあっても、ムーンセル完全停止のルートだけは辿り着けなかった。
そうしているうちにアルキメデスより先に「平均的かつ、今後もっとも広がりを持つ世界」のルートを主人公が証明し、霊子記録固定帯が決定。
アルキメデスの計画は水泡に帰した。
ちなみにエクステラ本編開始時、『主人公がアルキメデスと共に巨神の石室に入り、分割された』のが霊子記録固定帯Aである。
真ネロルートエンディングが霊子記録固定帯Bとなる。
もうこの間の時間においては、アルキメデスが何をどうしようと「結果」は決定したという訳だ。