グレイ

本編のヒロイン(ヒーロー)。エルメロイII世の内弟子。
探偵小説におけるワトソン役として、企画のほぼ最初に設定したキャラ。事件簿の企画は成立までに紆余曲折を経ているのだが、彼女だけはほぼ変わっていない。「最高の素質を持つ墓守でありながら、死霊を恐れる少女。そして彼女が持つ宝具はあのアーサー王の……」というキャッチコピーである。
最初はII世に対して距離をおいているが、徐々に関係を深めていくという路線は、シリーズ化と同時に決定。II世を大切に想いつつも、恋愛関係とは趣を変えた師弟の絆という方向性もそのときに決まった。いけすかない師匠などと言っていた一巻から、実に遠くに来たものだ。
なお、一巻でII世が「おそらくアーサー王の遠縁の末裔」と言ったのも、まったくのその場しのぎというわけではないが、本質としてはアーサー王の因子を埋め込まれた家系という方が近い。グレイの家系にはアーサー王の肉体の因子、地下の骸王には精神の因子が植え付けられてあり、骸王は来たるべきときまで眠りについていた。
十年前、姿が急激に変化したというのは、つまり第四次聖杯戦争でセイバー(アルトリア)が召喚されたタイミングである。このとき、因子の目覚めに応じてアッドの人格も起動したわけだが、グレイはほかの友達を失ってしまった。故郷の人間たちにとって、彼女は崇拝の対象となってしまったのだ。このため、初めて変異した顔を恐れてくれたII世に興味を抱き、行動をともにすることとなる。
グレイは、けして今の顔を嫌っているわけではない。ただ、変化が怖かった。唯一の友達であるアッドにしてからが、今の姿になったことで目覚めた存在である。ならば、自分という存在には価値があるのか。誰もが望む過去の英雄に成り果てるべきなのではないか。
そして、冠位決議編において、もう一度極東でセイバーが召喚されたことで、彼女の体は新たな変化を迎える。

内弟子としてのグレイは極めて献身的。
といっても、墓守として抑制的な生活を送っていた彼女からすると、今の生活はかなりゆるいぐらいである。エルメロイII世の世話こそなにかと手間がかかるものの、ほかは自由にしてよいとのことで、最初のニヶ月ほどは戸惑いっぱなしだった。もちろん魔術師としての基礎知識はほとんどないので、今のエルメロイ教室に馴染めたのは、フラットやライネスの協力によるところが大きい。スヴィンは初対面からほぼすぐにああなったので、協力も何もなかった。
「いつも兄の世話をしてもらってるが、君、何かわかりやすいおねだりはないのかい」
「おねだり、というようなことはないのですが」
「ないのですが?」
「もしも……許されるなら、もう少しだけ、今のようにいられたなら」
暖炉の前で、寂しそうに微笑した彼女に、ついライネスも新たなお菓子を勧めてしまったとか。
ちなみに、英語表記については、アメリカで頻用される「Gray」とイギリスで頻用される「Grey」で迷ったが、彼女の出身がどちらでもないことと、両国でGrayは黒と白の中間だがGreyはもっと青みがかった色だと捉える人もいるという話から、Grayを採用した(中間というのを重視したため)。

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ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 material: ロード・エルメロイⅡ世の事件簿用語辞典