「Fate/Zero」に登場したウェイパー・ベルベット。彼の約十年後の姿。ライネスより、半ば強制的にエルメロイII世の名を継がされ、教授として生徒たちに魔術を教えつつ借金返済や刻印修復に勤しむ毎日。
彼に関しては「Character material」を参照のこと。「Fate/Apocrypha」世界においても、やはりケイネスと対立、亜種聖杯戦争でライダー、イスカンダルと共に戦いを繰り広げた———ということになっている。
本作終了後、カウレス・フオルヴェッジ・ユグドミレニアもエルメロイII世の教室に合流予定。
いわずとしれた、本編の主人公。
本名ウェイバー・ベルベット。第四次聖杯戦争の、数少ない生き残り。
属性は地。得意とする魔術の特性は解毒。魔術の才能は凡庸だが、魔術を解体する才能には恵まれた、神秘の破壊者。
実のところ、エルメロイII世は知識においてほかの魔術師を圧倒しているわけではない。現代魔術科の学部長となって、アクセスできる資料は膨大なものとなったが、激務の中で読み込める資料の数などたかがしれている。
II世が卓越しているのは、目の前の事象や人物と、知識を結びつける速度と精度である。
何度かグレイが指摘しているように、彼は神秘や事件そのものよりも、むしろ神秘の裏にある魔術師を視ている。なぜ、そのような神秘があるのか、なぜそのような神秘に手を出さねばならなかったのか。彼の鑑定眼とは、結局人を鑑定するものなのだ。
とりわけ「この謎に意味がない」と見切った剥離城アドラの一件は、その特性が大いに活かされた事件と言えただろう。逆に、魔眼蒐集列車編以降、ハートレスを追うようになってからは、この鑑定眼ゆえにハートレスの思惑に引きずり込まれることもあった。謎を解くほど、ハートレスに協力せざるを得なくなる----という追い込み方は、II世の解体に対する極めて有効なハッキング方法だった。
事件簿本編の後、グレイの変化を止めるために、先代のケイネス・エルメロイ・アーチボルトが中途で遺した数々の論文へ、ついに手を出すこととなる。結果としてII世は先代が手慰みに書き散らしていた大量の理論を再解釈・分類統合することになるのだが……。
いつか、『ロード・ケイネス秘術大全』と題される魔導書の始まりであった。
概要
魔術協会の総本山、時計塔に所属する魔術師。
時計塔を支配・運営する十二の名家(ロード)のひとつ、エルメロイの現当主。
魔術の技量、才能は凡夫レベルだが、講師としての才能は誰もが認めるところである。らしい。
本名はウェイバー・ベルベット。エルメロイに養子入りするまではしがない新参魔術師の長男だったが、第四次聖杯戦争を経て人生が激変し、気がついたらエルメロイの家紋を背負うコトになってしまった苦労の人。
外見
英国人、男性、三十代。
顔立ちは彫りの深い美形ではあるが、つねに不愉快げな顔をしているため、美形というイメージはなし。
身長185cm、体重72kg、瞳の色ブラック、髪の色ブラック。
長い黒髪をストレートにおろしているが、髪は手入れされているので暑苦しさややぼったさはない。
葉巻を好むが、味を楽しんでいるのではなくもっぱら精神安定剤である。
性格
秩序・中立。
外向的、強気、能動的。
毒舌家で人間嫌い……のように見える、正義の人。
口を開ければ嫌みばかりいうインテリだが、決してあいてを見下しているワケではなく、“それに比べて私は何をやっているんだろう。まったくバカらしい。一番愚かなのは私自身だ!”といった自己批判が根底にあるだけ。
エルメロイII世は頭がよく、判断力があり、なにより見栄がなくなった人間なので自分の器というものを素直に受け入れてしまう。結果、
「本当は私だって大成したかった。だが自分には無理だと分かってしまった。そう理解した途端、まわりの連中がいかに“才能に溢れているのに使いこなせていない”かが分かってしまった。
こんな意地の悪い人生が他にあるか?なけなしのプライドを守るだけで精一杯だというのに、なんだって私が、あんなバカどもの人生の心配などしなくちゃならん!?」
などと悪態をつきながらも、「……見るに堪えん、醜悪なまでにもったいない。おまえ、ちょっとこっちにこい!」と面倒を見てしまう。
皮肉屋、悲観主義に見えるのは自分の限界が見えているからで、根っこは弱きを助け強きをただす善人。
面倒ごとには関わりたくないが、面倒ごとがあると気になって集中できないので悪態をつきながらも解決に乗り出したり協力したりしてくれる。
また、場数を踏んだので度胸こそついたものの、臆病であるのは変わりはない。彼が用心深く準備を万全にしたがるのはそのあたりが原因。
口調
一人称は「私」
他人に対しては、初対面、ないし親しくない相手は「名字」にさん、くん、付け。教え子は「名前」を呼び捨て。敵対者はフルネームを呼び捨て。
ライネスには「君」「お嬢様」と使い分けて極力、名前を口にしない方向で。
正式に助力を請う時はレディ、ミズ、ミスター、と呼ぶ。 ややじじくさい青年口調。
台詞は長く、大学教授のように回りくどく、辛辣。
言葉のまとめは「~だろう」「~という事だ」「~なのかね」とやや他人事のようにまとめるように。
口調こそ堅苦しいが、その内容は多岐にわたり、かつ新しいもの。“おっさんのクセに趣味が若いなコイツ!?″みたいな。
口にする言葉はたいてい厳しいが、相手が人生の岐路に立っている時などは落ち着いた、嫌みのない言葉になる。指導者としての面目躍如。
滅多なことでは興奮しないが、弟子のやんちゃ(フラットなど)に直面すると、まわりに人がいなくなった後でひとりで激おこ状態になる。「また仕事を増やしやがって、寝る間もないじゃないか!
そうか、やっと分かったぞ、ここは地獄だったんだな!
東洋には様々な地獄があるというが、弟子の不始末に奔走するシワス地獄があるに違いない!」
って感じでモノに当たり散らす。そして、決まってその現場を見てしまってクスリと味のあるほほえみをうかべるライネスお嬢様。
能力
魔術属性:地。特性は解毒、地脈・生体の調整など。たいへん地味。
魔術回路の質は中の下ほど。魔力(オド)生成量はウェイバー時代で20、エルメロイ時代で70+10。(10は魔術品や術式による隠し貯金みたいなもの)
※ちなみに士郎が25、凛が500。100に届けば一流の魔術師と呼べる。
この通り、実践魔術師としては一流には届かない。
研究、指導で才能を発揮するのは「調整」の特性によるところもあるだろうが、やはり本人の気質、性格によるもの。
荒事にはまったく向いていない。防御用の礼装もそれなりに持っているが、あまり所持したがらない。助手「先生、守り札を内ポケットにいれてるだけなんですか!?
他に礼装とか!?」エ「いらん。一流どもを相手にすればどうせ消し炭だ。一秒二秒寿命を延ばすためにジャラジャラと着飾っていられるか。襲われる前に不快さで息が詰まりかねん」助手「そんなんで今までどうやって生き延びたんですか!?」エ「決まっているだろう。守り札で防げないような場所には近寄らない」
攻撃手段も修得しているが、低威力なのであまり使いたがらない。そのクセ、拳銃などの小道具は持たない。
吸っている葉巻が最後の隠し武器で、葉巻には(魔力10)が込められている。「伊達や酔狂でこんなクソ高い嗜好品を吸っていると思ったか?」「まあ、伊達や酔狂で吸っているのは事実だがね」
経歴
1800年頃に魔術の門を叩いたベルベット家の長男。地元では天才と言われていたよ。
希望を抱いて時計塔に入学し、なんとか手に入れたコネでロードのひとり、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの教室に籍を置いた。ここまではそれなりにエリートコースだった。
が、二百年の歴史ではまだまだ新参で、ロードたちに言わせればウェイバーなぞ「魔術世界を回すための労働階級」にすぎない。
ウェイバーはそんな権威と古くさい組織構造に反発し、自分の才能を示すために第四次聖杯戦争に参加、色々あってただひとり生き延びたマスターとして時計塔に帰還する。
おそらく、自分の人生における最大の「戦い」はこれで終わった。
あとは身の丈に合った人生という戦いを送ろう、と爽やかな決意と共に。
しかし。彼の最大の戦いは聖杯戦争ではなかった。
帰国してから彼を待ち受けていたものこそが、ウェイバー・ベルベットの人生を決定づけるものだった。
ケイネス、ソラウを失ったアーチボルト家の衰退。ここぞとばかりにエルメロイが持っていた利権、魔術品、人材、資産を奪いに来る他のロードたち。ウェイバーが日本でのんびり帰国の準備をしていた数ヶ月、時計塔内部の事情は激変していた。
ウェイバーが帰国した時、ロードとしてのアーチボルト家はもはや立ち行かなくなる寸前だった。
ウェイバーはケイネスの死に責任の一端を感じ、せめて教室だけは維持できるよう微力ながらも奔走するが、虚しい努力だった。
若く、権力もないウェイバーに滅び行くエルメロイを維持する力はなかったのである。
それでもウェイバーは三年間にわたり教室だけは存続させた。
去っていく名門出の魔術師たちを引き留めるコトは不可能だった。
なのでウェイバーは近代魔術を学ぶ若い世代に目を付けた。もともと権力によりそう気の無かったウェイバーは、ニューエイジである近代魔術に嫌悪感はなかったのである。
ウェイバーは権力争いの果てに席を失っていた講師を説得し教壇に立たせ、時計塔内部で精神的支柱を求めていたニューエイジたちに居場所を作った。
はじめはサークルとしか言えなかった彼等の集まりはやがて教室と呼ぶに相応しい水準になり、ウェイバーも気がつけば必要な学科を修め、院生として正式に教壇に立てる資格を得ていた。
支配層におけるウェイバーの評判は最悪だったが、若い世代たちにとって彼は希望の星となった。本人がそれを心底イヤがっているのも好印象だったのだろう。
(時に、支配層やアーチボルト家から放たれる刺客たちを追い払うのはウェイバーをしたう後輩や仲間たちだった)
そうして、苦労の日々がウェイバーの眉間に消えない皺を刻みつけた頃、ウェイバーはアーチボルト家の分家、アーチゾルテに招集される。
なにごと?と首をかしげるウェイバーは、そこでアーチゾルテが回収したケイネスの遺体(破壊された魔術刻印)と、第四次聖杯戦争の内容報告を突きつけられる。
アーチゾルテの幼い当主・ライネスは語る。「帰国してからの君の活躍は知っている。日夜、胸躍らせながら拝見させてもらっていた」
ライネスはウェイバーのファンである、とニヤリとした笑顔で語る。無論、そんなワケはない、と死を覚悟するウェイバー。
アーチゾルテにとってウェイバーこそ衰退の原因だ。しかもアーチボルトから教室の利権を強引に奪い、エルメロイ教室を残す為とはいえあんな低俗なものに作り替えてしまった男だ。殺しても飽き足らない害虫である。
それをウェイバーが十分に承知しているコトを確認し、ライネスは交換条件を持ち出した。その契約に従うのなら聖杯戦争の内容を公開するコトはせず、また、ウェイバーの安全を保証すると。
その条件とは、
- エルメロイが負った借金をすべて返済する
- ライネスがロードを名乗れる歳になるまでロードの席を維持する
- ケイネス・アーチボルトの魔術刻印(アーチの刻印)を復元する
の三つだった。
あまりの不可能さに固唾を呑むウェイバーだが、ここで断ったらそれこそ殺される。責任があるのは事実だし、ウェイバーは仕方なくこの条件を飲む。ウェ「しかし、二つめの条件だが、具体的にはどうすれば?借金返済とかぶっていないか?」ライ「ああ、それか。分かりやすく言うと、私が成人するまで誰かにロードの仕事をしてもらう、という事だよ」
ウェイバー、いやな予感に目を見張る。「待て。それはつまり」「そういう事だ。他のロードどもとの折衝は心底つまらないと思うが、頼んだぞロード・エルメロイII世。それともこう呼ぼうか?親愛なるお兄様、と」
ウェイバー、目眩で倒れかかる。
そんなウェイバーに、「ああ、あとひとつ言い忘れていた。四つめ、私の家庭教師になること。血の繋がらない兄に指導を受けるというのは倒錯していて実にいい」
などと妖しく微笑むロリ当主なのだった。
以後、ウェイバーはエルメロイII世(ケイネスの後をついだので)として時計塔で活動する事になる。時計塔のロードとして学部、研究室を持ちながら貧乏講師であるカリスマの誕生である。
「なに、生涯を尽くせと言っているんじゃない。ロードの栄光が戻るまでと言っているんだ。この上なく良心的だと思うが?」「それを死ぬまで働け、と言うんだこの悪魔」