正式名称はムーンセル・オートマトン。
月の内部に発見されたエネルギー蓄積体。
人類とは異なる知的生命体によって作られたアーティーファクト。Fate/EXTRAの舞台となるスーパーコンピューターである。
電脳構造的に第七層まで確認されており、月の表面である第一層には一般のハッカーでもたどり着ける。
内部にあたる第二層から先への侵入はウィザードでなければ困難……というか、物理的な侵入方法は皆無。
魂の転移、疑似霊子状態の情報体でなければ深淵をのぞく事は出来ない。
旧世界の魔術師たちは瞑想の一環として、電波を利用せずともムーンセル内部へのコンタクトをはたしていたとか。
ムーンセルは、言うなれば「地球を観測する目」だ。
地球上すべての生命を忠実にシミュレートし、確かな未来予測まで可能とする演算器。
人類のデータベース。その生態、歴史から思想、魂までを記録した莫大なメモリー。
技術レベルが向上し、月の内部を探知できるようになった知的生命体へ、次のステージへの移行、神に等しい能力を約束する禁断の箱である。
もともとは異星文明によって置かれた観測機。
地球の生命の在り方を記録するだけの装置だったが、長い年月を経て現在の機能を持つに至った。
はじめは観測機だったが、しかし、観測するのなら“見えない部分”があってはならない。
(ハイゼンベルグの不確定性。観測者が観る事で事象を決定させる。観ていない部分は確定しない)
観測機はフェアでなくてはならない。観測する以上は、見えない部分などあってはならない。結果、ソレは地球の全てを知るための機能を必要とした。
すべてを平等に、ありのままに記録するためには、観測機以上の性能がいる。
こうしてソレの機能はおびただしい進化をとげた。
観測から監視、果ては星の運営すら把握する演算器にまで機能を拡張した。
規模が拡張すれば運営方針は複雑化していく。ソレは多くの端末を作り、セクションごとに機能を管理する人工知能さえ作り出した。(これが後に聖杯戦争におけるNPC、上級AIなどに利用される)
しかし、その一方で、ソレは自らに人工知能を搭載する事だけはかたくなに拒否した。
観測者に知性はあってはならない。
観測者に知性があっては、物事の意味を観測者が決定してしまう事になる。
そのため、ソレはあくまで一つの眼として、絶対的な客観性を維持し続けた。……機能運営のために組まれ、生まれていく知能らしきものを常に解体しながら。
よって、この演算器には善悪の思想も、未来への欲求も、さらには結末すらない。
ただそこにあるだけの器物。
神の残した自動書記[タイプライター]。
月に穿たれた観測レンズ。
後に、この夢を映すだけの水晶体はこう呼ばれる。
月の眼。
底なしのクラインキューブ。
この星の全てを読み上げた、持ち主のいないタイプ・ムーンと。