乳幼児の死亡率が高かった時代、未成熟の稚児は大人よりも死に近しい――――つまりは「この世ならざるもの」寄りの存在だと考える向きがあった。さらには古来より、神、またはそれに類するまつろわぬ存在が子供の姿をとって現れるという伝承は多々ある。それは無垢なる子供という存在に人々が神性を見出してきたことの証明なのかもしれない。神稚児信仰もそういった考えの一例である。
「七つまでは神のうち」
数えで七歳を迎えるまでの稚児は、人ではなく神や霊に近い存在だとする信仰・伝承。それは一般には、たとえば「祭事にて神の役割を与えられる」「信仰の象徴として大人達から大事にされる」程度の意味合いでしかなかったが、冬木の土地には本物に至ってしまった神秘があった。
伝承