ジュリアンの実父。
いずれダリウスに置換されてしまうエインズワースの歴代当主は、いずれも気力や情熱といったものが希薄な傾向にある。そこにあって、ザカリーは珍しく「熱い」男だった。表立っては静かで思慮深い様子を見せるが、内に灯る炎は決して消えることはなかった。
その炎の名は、正義。人類の救済という、エインズワースの掲げた名目を本気で信じていた。どんな犠牲を払ってでも、たとえ人類が他の何かに変容してしまうとしても、それを救うことこそが千年続く我が家系の悲願であると、心から信じた。
……だからこそ、ダリウスの違和感に気付くことができた。
彼は、ダリウスに置換されてしまう前に自身の人格の一部を人形へと置換していた。ダリウスを監視するために。あるいは、息子たちを守るために。だが、ただでさえ精神の欠落が起こる人格置換において、さらに分割した人格の置換は容易なものではない。結果、ほとんどしゃべらず動かず、かつてのザカリーとは似ても似付かない人形となった。
第五次聖杯戦争では、息子ジュリアンの手駒と成り果てる。士郎を「エインズワースの敵」と認識させられたザカリーは、凄まじい気迫でもって士郎に襲いかかった。その苛烈さこそ、内に燃やした炎の発露であったのだろう。刃を向けるべき相手を間違っていることに気付いたのは、今際の際であった。
ところで、最優のカードを父に、最強のカードを姉に使わせているあたり、ジュリアンの葛藤や甘さを感じないだろうか。