イノライ・バリュエレータ・アトロホルム

蒼崎橙子の師。三大貴族バリュエレータの当主。創造科の君主にして、事実上の最高位・色位の魔術師。
ひいては荒耶宗蓮や某リピートな魔術師の師にもなることから、おそらく事件簿執筆で最も構築に気を遣ったキャラ。というか、おおよそのイメージを伝えたところ、「分かった。三田さん好きに書いていいよ」と言われて、イカレてるなタイプムーンとの印象をさらに強くした。事件簿全体にアクセルが入ったのは、あそこで覚悟が決まったからと言ってもいい。
地と水と風の三重属性。魔術の特性は類感。本編ではちょっとした小技にとどまったが、砂を使った魔術を得意としており、常に携帯している小袋からは無量とも思えるほどの砂を吐き出す。作中蒼崎橙子の「先生の絵だけはご勘弁を」というセリフがあるが、これは彼女の砂絵に描かれた者がどういう運命を辿るか、よく知っていたから。

ある意味で、魔術師にとっての理想像。彼女は呼吸するように政治を行い、散歩するように魔術を研究しつづける。当時愛弟子であった橙子を封印指定として強く推薦したのも、そうした行為の一環に過ぎない。優先順位が上の事項だと考えて、それが理の当然であると思ったならば、彼女は欠片も躊躇しないからだ。そういう自分について矛盾も葛藤も感じないのだから、俗世にありながら仙人のごとく完成した女傑である。
その時代の人々に愛されるものこそが芸術という創造科の思想を体現し、老齢の魔術師には珍しく、iPodやパソコンなど最新技術を大いに楽しむ。立場にかかわらず話しやすいようにも思えるが、逆を言えば、あらゆる体裁を剥いで、本質を見極めてくる恐ろしい相手である。
本来、人間には体裁も葛藤も必要。
これらは社会を円滑に営むため、人間がつくりだした発明だからだ。
そうした要素を取り除いてしまった彼女は、三大貴族にふさわしい怪物といえるだろう。
なお、命名は奈須きのこ。
時計塔の重要なポジションであるため、仏に目を入れるように、彼女の命名だけはどうしてもお願いしたいと頼んだのであった。

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ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 material: ロード・エルメロイⅡ世の事件簿用語辞典