スヴィン・グラシュエート

エルメロイ教室の双璧の片割れ。
属性は火だが、やや変質。魔術の特性は回帰。フラットさえいなければまともなのに、と以前は思われていたが、グレイがやってきたことによって、その幻想は失墜。やはり双璧は変態度においても双璧であった、とエルメロイ教室のみんなに実感させた事件が起きたのは、剥離城アドラの一ヶ月前である。
何らかの形で獣の能力を借り受ける魔術は世界中に存在するが、グラシュエート家のそれはいっそ偏執的と言っても差し支えないものだった。獣の優れた形質を引用する―――というのではなく、自らをまるごと獣へと変容させてしまう魔術。神経も筋肉も骨格も、大脳すらつくりかえてしまうその魔術は、もはやほぼ絶滅したはずの人狼にすら匹敵する。
結論から言えば、スヴィン・グラシュエートは魔術師というより、魔術そのものの器といった方が正しい。だからこそ、自分と同じように、過去の英雄の器としてつくられたグレイに惹かれたのであった。
これはある意味、魔眼によって、常に他人の記憶に乗っ取られ続けるカラボーと同質の葛藤である。特異な才能を持ち、この性質を乗りこなしていたスヴィンなら、もしもカラボーと出会っていれば、何らかのアドバイスができたかもしれない。
作中にて、第三階位・典位に至っているが、これは単に彼個人の能力が認められただけではなく、グラシュエートの家系と、その研究の結晶である彼の身体が加味されたものである。その上で十代での典位は滅多にあるものではなく、II世がようやくここに……と感慨にふけったのも当然のことだろう。

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 material: ロード・エルメロイⅡ世の事件簿用語辞典