魔術協会において隠然たる勢力を諮る名門ヌァザレ家の娘。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの婚約者。
通常、一子相伝を原則とする魔道の家門は、嫡子以外には魔道の存在そのものすら秘匿するのが通例だが、ソラウの誕生当時、ヌァザレ家はかなり不穏な権力闘争の最中にあり、嫡子を暗殺されるのではないかというパラノイアに取り憑かれていた。そこで対策として、ヌァザレは兄妹の双方に魔術の初歩教練を施し、いずれ魔術刻印を移植する段になって生存していた方を後継者とする方針を取った。
ところが、結果的に兄妹双方ともに息災のまま闘争は終結し、魔術刻印と嫡子の地位はソラウの兄へと与えられる。事実上の用済みとなり、存在そのものすら否定された形のソーフウだったが、魔術師としての優秀な肉体的遺伝形質と、幼少期に叩き込まれた基礎魔術の素養は、一流魔術師に助手として奉仕するに足るだけのものがあり、そこも含めた「商品価値」として、彼女は政略結婚の道具とされる。
その扱いにソラウが不満を懐いたわけではない。そもそも好悪という感情の何たるかすらソラウには理解できないものだった。たしかに彼女は気難しい我が儘で周囲を翻弄し続けてきたが、それは自らの貴人としての価値を高く保つための態度として幼少期から刷り込まれた処世術であり、ソラウが心の底から何かを欲したり希望を懐いたりしたことは、生まれてこのかた一度もなかったのである。
故に、ディルムッドの魔貌による魅惑が、慕情として正しいものかどうかなど、ソラウにとって問題ではなかった。彼女にとっては、心の奥底から湧き上がる激情という感覚こそが、生まれて初めて手にした至宝であり、人生の価伯とすべきモノだったのだ。
……という設定を聞いた奈須きのこが「ワタクシの萌えポイントにドストライクでございます」とのたうち回ったとかなんとか。
人名