シロウ・コトミネ

第三次聖杯戦争において、アインツベルンによって召喚されたサーヴァント。クラスはルーラー。真名を天草四郎時貞。黒幕衆の一人、実質上のラスボス。仮に第三次聖杯戦争をビジュアルノベル化したとすると、アインツベルンの選択でエンディングが大幅に異る。今まで語られていた通り、アヴェンジャーを選べば正史―――「Fate/stay night」ルートへ向かうが、もしルーラ
ーを選んでいたならば、こちら「Apocrypha」ルートへと進む。
第三次聖杯戦争で受肉してから六十年もの間、あらゆる文献や霊脈を当たって冬木の聖杯戦争―――即ち「第四次」にあたる聖杯戦争が起こる日を待ち続けた。
聖杯戦争ではなく、聖杯大戦―――七騎vs七騎という状況も想定済みだったシロウはきっちりと聖堂教会から派遣された審判役兼マスターとして“赤”の側について、セミラミスをいち早く召喚。七騎vs七騎、更にルーラーがサーヴァントを召喚するという異常事態に大聖杯は自動的に今回のルーラー、ジャンヌ・ダルクを召喚したがそれすらも予測範囲内の出来事として計算に組み入れていた。
唯一、シロウが計算できなかったもの。それは、名前すらないホムンクルスがただささやかな願いを叶えようとしただけの出来事だった。
天草四郎時貞の出生も生涯も実はあまりハッキリとはしていない。確実なことは、島原の乱において最高責任者と呼べる地位についていたこと。たとえそれが、御輿———お飾りであったとしても、この少年は間違いなく江戸時代最大の一揆、島原の乱の首謀者だったのである。
今作最大、最強の問題児。次点で“黒”のライダー。元々、初期段階でのプロットはセミラミスが黒幕だった。しかし、既に「コンプリートマテリアル」で設定も含めて出されているキャラクターを黒幕というのもインパクトが弱い、と判断。「Apocrypha」のコンセプトとして「本家では設定上不可能だったことをやる」というのがあったので(七騎vs七騎もその流れで思いついたもの)、では更なる源流である「魔界転生」から天草四郎を引っ張り出してみてはどうか、と思いついたのが切っ掛け。
少年、少女。共にその戦いに旗が深く関わっていること。聖人になれなかった者、聖人になった者。共通点と共通でない点があまりに対照的で晴れてラスボスと抜擢した———までは良かったのだが。
そこで「……そう言えば本家の主人公の名前は……年齢もほぼ同じ……」などと悪魔が囁いて、シロウ・コトミネが誕生したのであった。「そんなんアリか」と読者だけでなく、知人にも大変ツッコまれました。すまぬ、すまぬ。でも偶然というには、あまりに運命的だったのよ……!
髪が白く肌が黒いのは魔術の代償……ではなく。強引に受肉した際の代償で髪が白くなり、その後セミラミスの触媒と、彼女が欲するであろう庭園の材料を集めるために中東に二十年近く潜伏する必要があったため肌の色を変えた、と複合的な原因。ちなみに女帝の触媒は聖杯大戦に参戦すると決まった時点でソフィアリ家から貸与されたのだが、自分でも二十年近く探して三点確保していたという念の入りようであった。
人間は嫌いだが、人類を深く愛している。島原の乱において、彼は人間がどこまで下衆に、下劣に、そして残酷に強くなれるかを見てしまった。同じ人種に対してですらこうなる。違う肌の色、違う文化であれば、どれほど人間の残虐さは加速するのだろう?
第三次聖杯戦争と、その直後に起こった第二次世界大戦でシロウはますますその考えを固める。結果、人類を救済するには大聖杯の奇跡———第三魔法しかないと、結論付けた。第八秘蹟会に所属しており、亜種聖杯戦争の審判役も時折務めていた。他の人員とはほとんど交流がなく、コィツいつからいたんだっけ、と同僚からは不思議がられていた。
サーヴァントとしては本人の言った通り、ルーラーでなければ三流。さして使い道のない宝具と英霊としては相当に新しいこともあり、聖杯戦争を勝ち進むには極めて困難。逆にルーラーであれば、スキル『真名看破』と『神明裁決』によって圧倒的有利を築くことができるだろう。
黒幕ではあるが、善良な存在。そもそも、シロウの行いが果たして悪かどうかは議論の分かれるところだろう。いつか辿り着くであろう場所、そこにほんのわずか近道への案内をしたとも言えるからだ。だが、一方で彼は紛れもなく悪である。個々人を救うことなく、ただ人類という種のみを救おうとしたからだ。
趣味や好むものなど一切なく、救済のために六十年を生きてきた。結末は覆されたものの、セミラミスの膝で朝日を眺めたその瞬間こそが———シロウにとっては、至福の時だった。

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