亜種聖杯戦争

「Apocrypha」世界において、十数年前から乱発されている極小の聖杯戦争。わずか二騎で行われるものから、冬木には劣るものの相当の規模で開催される五騎による聖杯戦争まで、世界中であらゆる聖杯戦争が明るく楽しく激しく行われている。
というのも、第三次聖杯戦争においてダーニックが強奪した聖杯を探られないよう、本来は絶対に秘匿すべき情報である聖杯戦争の仕組みを、魔術師という魔術師にバラ蒔いたため。
根源など彼方の夢物語だと嘆いていた魔術師たちでも、この儀式によって一歩……あるいは半歩近付けると悟った彼らは死に物狂いで聖杯を作成することになった。
大雑把に百の聖杯が作成されると九十五が作成途中で頓挫、完成した残り五つの内四つが不完全で魔力を注ぎ込んでいる最中に暴発。最後の一つが冬木とは比較にならないほど劣化した儀式として成立する。
とはいえ、集積した魔力によっては大小様々な奇跡を行使することも可能だろう。もっとも、そんな駄作の聖杯で召喚されるサーヴァントにとっては良い迷惑である。召喚を拒絶するサーヴァントや、マスターを手にかける叛逆サーヴァントも多数。
若い魔術師の間では、「聖杯戦争攻略wiki」みたいなものが密かに作成され、頭の固い老人たちを出し抜こうと知恵を振り絞っている……かもしれない。亜種聖杯戦争初期時代は俗に「暗殺者の春」と呼ばれ、アサシン(ハサン・サッバーハ)が猛威を奮った(魔力消費が低い上に、マスター殺しはサーヴァント同士の対決よりも遥かに容易だったため、それはそれは楽な仕事だったらしい)が、中期以降はさすがに対策が取られてしまい、ダイアグラムも下落する一方。アサシンの召喚が確認された途端に、それまで楽しくサーヴァントを殺し合わせていたマスターたちがあっさり手を組むということも良く見かけられる光景だそうな。
亜種聖杯戦争においては霊脈の関係上、サーヴァン卜が冬木ほどに実力を発揮することができないパターンが多く、土地による信仰度の多寡でサーヴァントの有利不利が明瞭になることもあってか、地元サーヴァントの触媒争奪戦になることも多々。
例えばギリシャにおける亜種聖杯戦争は即ち「ヘラクレスの触媒」の取り合いであり、それを取った魔術師が勝利する。……つまり一周回って、単なる魔術師同士の魔術合戦になっているらしい。可愛いバツイチ魔術師日く「っていうか地元であのマッチョと戦えとかマジおふざけにならないでくれるかしらって話なのよ」。
それならと、ヘラクレスを禁止すると、今度はアキレウスの触媒の取り合いになるため、ギリシャで聖杯戦争がマトモに開催されたことはないとか。酷い話もあったものである。

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